サービス業としての福祉業界の特殊性

 サービス業は、お客様が

「〇〇したい!」

という要求があってはじめてサービスを提供するのが基本だ。

 例えば、

「ラーメンなんか食べたくない!」

と言うお客様がラーメン屋には行かないだろう。

「ラーメン屋に行ってラーメンを食べたい!」

となるからお客様がサービスを受けに来るのである。

 ところが、福祉業界の場合は、必ずしもそのような関係性にない場合が多々ある。

 入所施設の場合、24時間365日サービスを提供する上で、ご利用者様が食事を摂りたくないタイミングで食事の時間になる時がある。

 そこにおいて、

「食事なんか欲しくない」

というご利用者様に対してお食事を提供するという場面が生じる。

 このように、ご利用者様が必ずしも求めていないサービスをサービス提供者が提供する場面が福祉業界には多く見られる。

 そこに、他のサービス業との違いがある。

 それが、サービス業としての福祉業界の特殊性である。

 そのような状況に直面した時、どのように対処すればよいのか?

 ご利用者様のその時の思いにしっかりと寄り添うことのできる対応が求められる。

「食べたくない」

というご利用者様に無理強いしたり、むきになってはいけない。

「お食事のお時間なので召し上がっていただかないと・・・」

「お食事がいらないのでしたら片付けますね・・・」

 このような対応をとってしまうと、ご利用者様との関係性は険悪になってしまうことが目に見えている。

「いまはお食事する気分ではないのですね・・・」

「何かお困りのことはございませんか・・・」

 なにかとっかかりとなる情報を引き出しながらご利用者様のお話を傾聴し、寄り添う姿勢を見せて、ご利用者様にとって害のない存在であることを示さなければならない。

 ご利用者様との壁をつくってしまうようなコミュニケーションでは、サービスは提供できない。

 福祉業界におけるサービス業としての難しさがそこにある。

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