福祉業界でより良い人材育成を行うのはとても難しい場合がある。
なぜなら、人材育成を行うベテラン職員自身が、サービス業としての福祉に対する心構えに欠けていることがあるからだ。
特にいわゆる措置の時代から福祉の現場で働いていた職員にとって、サービス業としての感覚は馴染みが薄い。
そのため、いくらサービス業としての福祉が制度として確立されていても、サービス業として福祉を捉え直すことに抵抗感があるのだ。
措置の時代では、ご利用者様を「家族」のように捉える雰囲気があった。
そのために、「アットホームな雰囲気」が重要視された。
ご利用者様にとってのより良い親であり、兄弟であることが福祉の現場で求められたのだ。
しかし、契約制度が整えられ、福祉事業者とご利用者様が対等な関係性の中で、福祉サービスを選択できるようになると、そのような旧態依然の雰囲気は不要となる。
「アットホームな雰囲気」というのは、一見すると悪いもののようには聞こえないが、実は、家庭的であるがゆえに福祉職員とご利用者様との関係性に隙を与えてしまう。
そのちょっとした隙が、虐待や不適切なケアに繋がる。
そのような課題を解決する上で、利用契約制度の下、福祉が本当の意味でサービス業として成り立つことはとても重要なことなのだ。
そのため、福祉の人材育成で重要となるのは、旧態依然のスキルから、サービス業としてのスキルへと移行していくことである。
その移行が実現することで、はじめて福祉の人材育成は正しく機能する。